荒川区新庁舎整備 基本構想・基本計画
荒川区役所の現本庁舎は、昭和43年(1968年)の竣工から半世紀以上が経過し、老朽化や狭隘化(きょうあいか)といった深刻な課題を抱えている。
区ではこれまでに「荒川区新庁舎整備基本方針」を策定し、学識経験者や区民委員等で構成される策定委員会での議論を重ねてきた。本記事では、令和8年(2026年)2月に公表された「基本構想・基本計画案(中間まとめ)」を軸に、同年7月の第6回委員会で追加公表された建物規模・配置計画等の最新情報も交え、全体像と今後の見通し・詳細データを構造化して解説する。
1. 新庁舎建設の背景と現状・課題
現庁舎の経緯と抱えている課題
- 建物の著しい老朽化 昭和43年の竣工から50年以上が経過している。平成21年〜23年にかけて耐震補強工事を実施したため耐震性能自体は確保されているが、構造体や設備機器の劣化が著しく進んでいる。
- 狭隘化と行政機能の分散 業務量や職員数の拡大に伴い、執務スペースや来庁者の待合スペースが不足している。また、行政機能が6施設(北庁舎、分庁舎、サンパール荒川、あらかわエコセンター、がん予防健康づくりセンター、セントラル荒川ビル)に分散配置されており、区民の利便性低下や組織間の連携阻害を引き起こしている。
- 防災拠点機能と環境性能の強化が必要 荒川区はほぼ全域が荒川氾濫時の浸水想定区域に指定されており、本庁舎周辺においても最大5m以上の浸水が想定される。非常用電源や給排水設備の高所配置・バックアップ強化が急務である。また、旧式構造のため脱炭素(ゼロカーボン)や高度な省エネ性能の導入に限界がある。
検討の経緯
- 2024年(令和6年)2月: 「荒川区新庁舎整備基本方針」策定。
- 2025年(令和7年): 学識経験者・区議会議員・区民委員・区職員による「新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会」が発足し、具体検討を開始。
- 2026年(令和8年)2月: 「新庁舎整備基本構想・基本計画(中間まとめ)」案を第4回策定委員会で提示。
- 2026年(令和8年)7月: 第6回策定委員会にて建物規模や配置計画(A案・B案)の具体的試算を公表。
2. 現庁舎における具体的な問題点
1. 設備劣化と維持管理コスト
- 配管内部の腐食・錆、天井からの漏水、空調設備の不具合などが多発。
- 突発的な故障への対症療法(応急修理)を繰り返しており、維持修繕費が増大。一斉改修を行う場合も多額の費用と一時移転等の課題が生じる。
2. 窓口・執務環境とバリアフリー
- 専用の待合スペースが不十分で廊下に椅子を設置しているため、通行の妨げやプライバシー確保の困難が発生。
- 多様な来庁者(高齢者、障害者、外国人、子育て世代)に対応するユニバーサルデザインが不十分。
3. 整備の基本理念と7つの基本指針(公式文言)
基本理念
『あらかわの魅力をひらき、すべての人にやさしい、未来とつながる庁舎』
7つの基本指針
1. 誰もが利用しやすい庁舎
- ワンストップ型窓口の導入検討
- 分かりやすい動線計画と案内機能の充実
- 快適な待合スペースおよびプライバシーに配慮した相談ブースの確保
2. 機能的・効率的で働きやすい庁舎
- 将来の組織改編やレイアウト変更に柔軟に対応できるフレキシブルな執務空間
- 職員の生産性を向上させる快適な執務環境・会議室の確保
3. 区民を守る安全・安心の拠点となる庁舎
- 十分な耐震性能と浸水対策(受変電設備等の高所配置)
- 非常用発電や給水機能の強化による災害時業務継続(BCP)の確保
- 警察・消防・関係機関とのスムーズな連携体制
4. 長寿命で可変性のある庁舎
- 構造体の耐久性確保とライフサイクルコスト(LCC)の削減
- 将来的な行政需要の変化に対応可能な構造・設備計画
5. 環境に配慮した庁舎
- 高断熱化や最新の省エネ機器の導入
- 太陽光発電等の再生可能エネルギー利用による環境負荷低減
6. 人々が集える庁舎
- 荒川公園や周辺環境と一体となったオープン空間の再整備
- 区民が日常的に立ち寄り、交流・活動できるコミュニティスペースの設置
7. まちとつながり区民の誇りとなる庁舎
- 地域の伝統や魅力を映し出すデザインと景観形成
- 地域との連帯感を高め、区民のシビックプライド(誇りや愛着)を育むシンボルとしての整備
4. 建設地の選定結果
建設地の検討にあたっては「区民利便性」「災害対応能力」「都市計画との整合性」「事業実現性」「財政効率性」の5つの視点から比較が行われた。
- 現庁舎・荒川公園敷地(選定:最適)
- 区の地理的・人口重心付近にありアクセス性が良好。
- 区有地(公有地)のため土地取得費がかからず、財政効率性と実現性に優れる。
- 他の区有地や民有地の活用(不適)
- 必要な規模を満たす空き区有地が存在しないこと、民有地取得は膨大な交渉期間と多額の財政負担を伴うため現実的ではないと判断された。
5. 新庁舎の規模・構造計画と周辺一体整備
| 項目 | 計画概要 |
| 事業計画地面積 | 約26,818㎡(現庁舎・荒川公園・荒川区民会館(サンパール荒川)等を含む一体敷地) |
| 都市計画要件 | 建ぺい率80%、容積率600% |
| 想定建物規模 | 地下1〜2階、地上12〜13階建て/延べ床面積 約38,000㎡ |
| 高さ制限 | 約60m |
| 環境・防災設計 | 1階床面のかさ上げ・止水対策、ZEB Ready認証取得を目指す構造 |
| コスト抑制策 | 公園敷地等を活用した段階的施工により仮設庁舎を設置せずに建て替えを推進 |
配置計画案(検討中の2モデル)
- A案(機能分離型): 西側に荒川公園、中央に広場、東側に新庁舎、北側に荒川区民会館(サンパール荒川)を配置するモデル。
- B案(みどり一体型): 中央に荒川区民会館(サンパール荒川)、東側に新庁舎を置き、それらを緑地や公園広場で包み込むモデル。
6. 今後のスケジュール(見通し)
- 2026年度(令和8年度): 基本計画の策定完了・パブリックコメントの実施
- 2027年度(令和9年度): 基本設計着手
- 2031年度(令和13年度)〜 2033年度(令和15年度): 建設工事実施
- 2034年度(令和16年度): 新庁舎 供用開始(予定)

