圧倒的な安さの秘密と、今後の可能性に迫る!
フードデリバリーサービス「Rocket Now(ロケットナウ)」は、送料とサービス料が無料であることで注目を集めている。この驚くべき安さは、どのように実現されているのだろうか。その理由と、今後の展開について考察する。
巨大資本による先行投資戦略
ロケットナウを運営するのは、韓国のEC大手企業「Coupang(クーパン)」の日本法人、CP One Japan合同会社だ。NYSEに上場するCoupangは、巨大な資本力と投資体力を持つ。ロケットナウの無料提供は、この膨大な資本を背景にした先行投資戦略である。
収益よりも、まずは日本でのブランド認知度と市場シェアの獲得を優先している。このため、利用者はコストを気にすることなく、気軽にサービスを利用できるのだ。
Coupang(クーパン)の概要
項目 | 内容 |
会社名 | Coupang, Inc. |
設立日 | 2010年7月 |
上場市場 | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
主な事業内容 | Eコマース、フードデリバリー、フィンテックなど |
主な市場 | 韓国、日本、台湾 |
年間売上高 | 約2.3兆円(2024年度) |
年間純利益 | 約600億円(2024年度) |
※ 上記の情報は、Coupangが公開している2024年度の財務情報に基づいている。為替レートによって円換算額は変動する。
加盟店からの手数料収入モデル
送料やサービス料をユーザーから徴収しない代わりに、加盟している飲食店から手数料を得るビジネスモデルを採用している。
ロケットナウの無料配送は、利用者の注文数を増やす大きな要因となる。注文件数が増えれば、加盟店の売上も向上する。結果として、ロケットナウは手数料収入を確保でき、加盟店は集客効果を得られる。このように、双方にメリットがある仕組みが成り立っている。
データ活用による将来の収益化
ロケットナウは、サービスを通じて膨大なユーザーデータを蓄積している。利用者の注文履歴や購買傾向を分析することで、将来的な収益化を目指す。
蓄積されたデータは、広告サービス、マーケティング支援、決済サービスなど、多岐にわたる収益チャネルの構築に活用される可能性がある。目先の利益だけでなく、長期的な視点でビジネスを展開する計画がある。
積極的なキャンペーンによる囲い込み戦略
ロケットナウは、ユーザー、ドライバー、加盟店の全てに対して、積極的なキャンペーンを展開している。これは、短期間でプラットフォームのエコシステム全体を構築しようとする、強力な囲い込み戦略だ。
- 利用者向け: ユーザーには、総額4,000円分など、注文時にすぐに使えるクーポンを配布している。
- ドライバー向け: 新規登録後に初配達を完了すると、2,000円のボーナスが進呈されるキャンペーンを実施している。
- 加盟店向け: 既存の加盟店が新規店舗を紹介し、登録が完了すると、紹介者に1万円分のロケットナウクーポンがプレゼントされるキャンペーンを展開している。
(※2025年8月6日時点)
競合サービスとの比較
ロケットナウが「送料・サービス料無料」という強力な武器を持っている一方で、競合サービスはどのような料金体系になっているのだろうか。主なフードデリバリーサービスと比較してみよう。
ロケットナウ | 出前館 | Uber Eats | Wolt | menu | |
配送料 | 無料 | 0円〜(変動あり) | 50円〜(変動あり) | 50円〜(距離により変動) | 300円〜(距離により変動) |
サービス料 | 無料 | なし | 注文代金の10%程度(上限あり) | 注文代金の12%程度(上限360円) | 原則なし(特定の条件で発生) |
加盟店手数料 | 非公開 | 10%~40%程度(契約形態による) | 35%程度(自社配達は12%) | 30%程度 | 35%程度(自社配達は10%) |
ドライバーへの報酬 | 非公開(週払い) | 1件あたり400円〜(変動あり) | 仕組みは非公開(変動制) | 1件あたり600円〜(変動あり) | 1件あたり550円〜(変動あり) |
注記
- 各料金・手数料は、時期やキャンペーン、エリア、注文状況によって変動する可能性あり。
- 各サービスには、配送料やサービス料が割引になるサブスクリプションサービスがある。
既存のフードデリバリー市場への脅威
この比較表を見ると、ロケットナウが「配送料・サービス料無料」という点で、既存の主要なフードデリバリーサービスにとって大きな脅威となっていることがわかる。
出前館、Uber Eats、Wolt、menuといった先行サービスは、利用者が支払う配送料やサービス料を収益源の一部としている。一方、ロケットナウはここを完全に無料にすることで、ユーザー獲得において圧倒的な優位性を確立しようとしている。
先行する各社が、この強烈な低価格戦略にどう対抗していくのかが、今後のフードデリバリー市場の大きな焦点となるだろう。ロケットナウが市場シェアを急速に拡大すれば、既存サービスも追随して配送料やサービス料の見直しを迫られるかもしれない。
ロケットナウは今後も無料を継続できるのか?
ロケットナウが今後も送料・サービス料ゼロを継続できるかは不透明であり、多くのユーザーがその動向を注視している。かつて、PayPayが加盟店手数料を無料にして加盟店数を急拡大させた後、有料化に転換したように、ロケットナウも同じ道をたどる可能性は十分に考えられる。
この「送料・サービス料ゼロ」は、あくまで市場参入と成長のための戦略的な初期投資である。親会社であるCoupangは上場企業であり、投資家に対して将来的な収益性を示す必要がある。市場での確固たる地位を築いた後には、収益化へと舵を切ることは自然な流れと言える。
今後、ロケットナウが持続的な成長を目指す上で、加盟店手数料の引き上げ、ユーザーへの月額会員制度の導入、広告収益といった新たな収益源を確立していく可能性は高い。
まとめ
ロケットナウの「送料・サービス料0円」は、巨大な資本力を持つ親会社による先行投資、加盟店からの手数料収入、そして将来的なデータ活用による収益化という、複合的な要因によって実現されている。
利用者にとっては、コストメリットが非常に大きい魅力的なサービスだ。しかし、この「無料」はあくまで成長段階における戦略の一環であり、今後、有料プランが導入される可能性もゼロではない。サービスの最新情報は、公式アプリや公式サイトで確認することをお勧めする。