東京都職員の生涯年収はどれくらい?多様なキャリアと年収のリアル
私たちの暮らしを支える東京都職員。窓口での手続き、インフラの整備、福祉サービスの提供、国際都市東京の運営まで、その仕事は多岐にわたる。しかし、彼らの年収やキャリアパスについては、あまり知られていないことが多い。多様な職種と、学歴や出世によって大きく変わる東京都職員の生涯年収のリアルを深掘りする。
東京都職員の職層(階級)と人数の割合
東京都職員の「階級」は、一般的に「職層」と呼ばれる。行政職を例にとると、経験年数や能力に応じて昇格していく。その構成は一般的な企業と同様にピラミッド型であり、上位の職層になるほど人数は少なくなる。
職層名 | 人数割合(推定) | 補足 |
局長級 | 0.X%未満 | 各局のトップ。政策決定や組織運営の最高責任者。 |
部長級 | 1%未満 | 各局の部を統括。組織の中核を担う。 |
課長級 | 5%程度 | 各課の責任者。実務と管理の両面で重要な役割を果たす。 |
課長代理級 | 10%程度 | 課長を補佐し、係長を指導する立場。 |
係長級 | 25%程度 | 現場の実務をまとめ、若手職員を指導する中核的存在。多くの職員が定年までに到達する。 |
主任級 | 30%程度 | 専門的な実務を担当。経験を積み、係長への昇進を目指す。 |
主事級 | 25%程度 | 入都時の初期職層。基礎的な実務を担当し、経験を積む。 |
(※人数の割合は、東京都の組織構成や一般的な地方公務員のピラッド構造から推定したもので、厳密な統計とは異なる場合がある。行政職をベースとした目安。)
このピラミッド構造からもわかるように、課長級以上の幹部職に就くのは限られた職員のみとなる。
東京都職員の生涯年収シミュレーション
ここからは、東京都職員の具体的な年収推移を3つの異なるキャリアパスで見ていく。それぞれの年収は、基本給、地域手当(東京都特別区内勤務は最大20%加算)、ボーナス(期末・勤勉手当、年間約4.5ヶ月分)を基にした目安であり、個人の扶養状況、住居手当、残業時間などによって変動する。定年は原則60歳とする。
1. 高卒平凡さん(主任~係長級で定年)
高卒で採用され、安定して主任級として長く活躍し、定年間際に係長級に昇任する、あるいは主任級で定年を迎える場合のモデル。多くの東京都職員(行政職)がこのキャリアパスに近いと言われている。
年齢 | 職層の目安 | 年収目安 | 備考 |
18-22歳 | 主事級 | 約280万~350万円 | 入都初期、基本的な実務を学ぶ |
23-27歳 | 主事級~主任級 | 約360万~430万円 | 主任級に昇格。専門性を高める |
28-32歳 | 主任級 | 約450万~520万円 | 経験を積み、中堅として活躍 |
33-37歳 | 主任級 | 約530万~600万円 | 現場のリーダー的存在に |
38-42歳 | 主任級~係長級 | 約620万~680万円 | 係長級に昇格。部下を持つ場合も |
43-47歳 | 係長級 | 約700万~750万円 | ベテラン係長として部門を支える |
48-52歳 | 係長級 | 約760万~800万円 | 給与も安定し高水準に |
53-57歳 | 係長級 | 約810万~850万円 | 定年が近づき、給与もピークに |
58-60歳 | 係長級 (定年退職) | 約860万円 | 定年退職。退職金は別途支給される |
生涯年収(約18歳~60歳) | 約3億~3億3000万円 | (退職金含まず) |
2. 大卒平凡さん(係長~課長代理級で定年)
大卒で採用され、比較的順調に係長級までは昇任するが、課長級の壁は越えられない場合のモデル。大卒の東京都職員(行政職)の中では、このキャリアパスが最も多いと考えられる。
年齢 | 職層の目安 | 年収目安 | 備考 |
22-26歳 | 主事級~主任級 | 約350万~450万円 | 入都初期、大卒初任給からスタート |
27-31歳 | 主任級~係長級 | 約480万~580万円 | 早期に係長級に昇格 |
32-36歳 | 係長級 | 約600万~700万円 | 現場のまとめ役、若手指導など |
37-41歳 | 係長級~課長代理級 | 約720万~820万円 | 課長代理級に昇格。課長を補佐する立場 |
42-46歳 | 課長代理級 | 約840万~920万円 | 部門の中核を担う |
47-51歳 | 課長代理級 | 約940万~1000万円 | 年収1000万円到達も視野に |
52-56歳 | 課長代理級 | 約1020万~1080万円 | 定年が近づき、給与もピークに |
57-60歳 | 課長代理級 (定年退職) | 約1100万円 | 定年退職。退職金は別途支給される |
生涯年収(約22歳~60歳) | 約4億~4億4000万円 | (退職金含まず) |
3. 大卒出世さん(課長級~局長級で定年)
大卒で採用され、昇任試験や選抜を順調に突破し、幹部クラスにまで上り詰める場合のモデル。東京都の幹部職員として、政策形成や組織運営に深く関わる、ごく一部のエリート職員のみが辿れるキャリアパスだ。
年齢 | 職層の目安 | 年収目安 | 備考 |
22-25歳 | 主事級~主任級 | 約350万~480万円 | 大卒入都初期。主任級に早期昇格 |
26-30歳 | 係長級 | 約550万~680万円 | 係長級に早期昇格。若くしてリーダーシップを発揮 |
31-35歳 | 課長代理級 | 約700万~850万円 | 課長代理級に昇格。幹部候補として期待される |
36-40歳 | 課長級 | 約900万~1050万円 | 課長級に昇格。年収1000万円超え。部下を統括 |
41-45歳 | 課長級~部長級 | 約1100万~1250万円 | 部長級に昇格する可能性も |
46-50歳 | 部長級 | 約1250万~1400万円 | 各局の部を統括する幹部職 |
51-55歳 | 部長級~局長級 | 約1400万~1550万円 | 局長級に昇格する可能性も。政策決定の中枢へ |
56-60歳 | 局長級 (定年退職) | 約1600万円以上 | 各局のトップとして定年退職。退職金は高額 |
生涯年収(約22歳~60歳) | 約5億5000万~6億5000万円 | (退職金含まず) |
東京を動かす使命と、その対価
東京都職員の生涯年収は、その学歴とキャリアパスによって大きく異なる。特に、課長級以上の幹部職に昇任できるかどうかで、生涯年収には数億円単位の差が生まれる。
彼らは、世界有数の都市である東京の行政を担い、住民生活の向上、都市の発展、そして大規模なイベント運営まで、多岐にわたる重要な役割を果たす。その責任の重さ、そして専門性と公共性への高い意識が求められる。安定した身分でありながら、自らの努力と実績でキャリアと収入を大きく伸ばせる可能性を秘めた、やりがいのある仕事と言えるだろう。