選挙のたびに、「白票を投じた」「誰にも入れたくないから空白で出した」という声が聞こえる。だが、白票は本当に意味のある行動なのか? 棄権と何が違い、当選者にどのような影響を与えるのか? さらに言えば、白票とは「ただの書き間違い」と同じ扱いではないのか? 本記事ではその実態を明らかにする。
白票とは何か?――中身のない投票
白票とは、投票用紙に候補者名を書かずに提出された票のことを指す。誰にも入れたくない、選びたくない、という意思の表れだと考えられている。
だが選挙管理上、白票は「無効票」として扱われる。
無効票は、選挙結果にまったく影響を与えない。
白票と誤記票は同じ「無効票」
公職選挙法上、白票と候補者名の書き間違い(誤記票)は、どちらも同じ「無効票」に分類される。たとえば、
- 「山田」と書くべきところを「山本」と書いた
- 同姓同名で判断不能な名前を書いた
- 落書きや空白のまま出した
こうしたすべてが「無効票」であり、選挙結果には反映されない。
つまり、白票は意思表示ではあるが、制度上は「書き損じ」と何も変わらない。
白票は棄権と何が違うのか?
白票と棄権(=投票所に行かないこと)の違いは、単に「足を運んだかどうか」だけである。どちらも有効票にならない以上、結果に与える影響はゼロ。唯一の違いは、白票を入れた人には「投票した」という事実が記録され、棄権者には記録が残らないことだ。
なお、白票でも、記入ミスでも、投票箱に入れれば「投票した」とみなされるので、白票も投票率の計算には含まれる。
なぜ「白票は当選者を支持したのと同じ」と言われるのか
たとえば、候補者AとBがいて、Aが嫌いだから白票を入れたとする。その場合、Aの得票を1票でも減らすことはできない。しかも、Bに1票入れていればAを落選させられた可能性があるなら、白票によってAが当選する道を開いたことになる。
これは、結果的に「現状維持」または「最有力候補を利する」投票行動だと解釈される。白票は、誰かを支持しないという行動である一方、「誰かの当選を止める力を放棄した」という意味でもある。
白票に意味を持たせる制度が日本にはない
海外には、白票(または「無所属への投票」や「誰にも入れない」選択肢)が政治的効力を持つ制度もある。たとえば、
- 白票が一定割合を超えると再選挙
- 白票が最多だった場合は全候補失格
といった仕組みを採用する国や地域も存在する。
だが日本にはそのような制度は存在しない。白票がどれだけ多くても、現実には意味がない。
抗議したいなら、最もマシな候補に入れるしかない
「誰も選べない」と感じる選挙は多い。それでも、棄権や白票では現状を変えられない。選挙制度の枠内で「よりマシな選択肢を選ぶ」ことが、唯一の現実的な手段である。