線路への立ち入りは法律違反!その行為が招く深刻な結果とは?

新幹線 鉄道

線路への立ち入りは、写真撮影や近道といった安易な気持ちから行われることがある。しかし、この行為は鉄道営業法違反に留まらず、状況によっては非常に重い刑罰が科せられる重大な犯罪行為である。この記事では、線路への立ち入りがどのような罪に問われ、過去にはどのような事例があったのか解説する。

罰則は軽くない

線路への立ち入りは、一般的に「鉄道営業法」に違反する。これらの法律には、1万円以下の科料といった罰則が定められている。だが、これはあくまで危険を伴わない、単なる立ち入りに対する罰則にすぎない。もし線路内での行為が、列車の運行に影響を及ぼしたり、具体的な危険を生じさせたりした場合、より重い罪に問われる。

鉄道営業法

この条文は、正当な理由なく、みだりに(「妄ニ」)駅やその他の鉄道敷地内に立ち入る行為を禁じている。「科料」の金額は、刑法第17条の規定により、1,000円以上10,000円未満の範囲で定められている。

鉄道営業法違反の罰則が軽いのは、歴史的な背景や法律の目的が関係している。

法律の背景

鉄道営業法が制定されたのは1900年(明治33年)であり、当時の社会状況が影響している。当時の日本では、鉄道はまだ新しい交通手段で、現在ほど厳密な安全意識が浸透していなかった。また、鉄道が通る場所も、必ずしもフェンスなどで厳重に囲まれているわけではなく、人々が立ち入りやすい状況だった。

こうした背景から、立ち入り行為をあまりに重い罪にすると、多くの人が罰せられることになり、社会的な混乱を招く可能性があった。そのため、立ち入り行為自体を「犯罪」として厳しく罰するのではなく、鉄道の安全な運行を妨げない範囲での立ち入りは、比較的軽い罰則に留めるという考え方があった。

鉄道営業法
第三十七条 停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ科料ニ処ス

鉄道営業法

刑法
(科料)
第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。

刑法

威力業務妨害罪

線路への立ち入りによって列車を停止させたり、運行を遅延させたりして鉄道会社の業務を妨害した場合、威力業務妨害罪が適用されることがある。この罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。

威力業務妨害罪の適用が難しいケース

  1. 「威力」の定義が曖昧: 威力業務妨害罪における「威力」は、「人の自由意思を制圧するに足りる勢力」とされている。しかし、何が「勢力」にあたるか、また、それが「自由意思を制圧する」ほどのものであるかは、状況によって大きく異なる。
    • 例: 大勢で押しかける行為は「威力」と判断されやすいが、一人で黙って線路に立ち尽くす行為は「威力」と判断されない可能性がある。
  2. 業務妨害の程度: 業務を「妨害」したかどうかも、その程度の判断が難しい。
    • 例: 電車が1分遅れただけで業務妨害となるか、それとも数十分の遅延が必要か、明確な基準があるわけではない。

これらの理由から、威力業務妨害罪の適用には、行為の態様、悪質性、結果の重大性などを総合的に考慮した上で、個別の事案ごとに判断する必要がある。単に線路に立ち入ったという事実だけでは、成立しない場合がある。

往来危険罪

線路内に置き石をしたり、レールを破壊したりするなど、列車運行に具体的な危険を生じさせる行為は、刑法第125条の往来危険罪に該当する。この場合、2年以上の有期懲役という極めて重い刑罰が科される。

業務上過失致死傷罪

立ち入りが原因で列車事故が発生し、乗客や鉄道員が死傷した場合は、業務上過失致死傷罪に問われる可能性がある。この場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられる。

新幹線特例法

新幹線の線路への立ち入りは、在来線よりもさらに危険性が高いため、新幹線特例法が適用される。この法律では、新幹線の線路への立ち入りに対して、1年以下の懲役または5万円以下の罰金が定められている。

線路立ち入りと刑罰の概要

行為の内容適用される法律刑罰の最大刑
単に線路内を歩く、または立ち入る行為鉄道営業法
(利用者の行為を規制する基本的な法律)
1万円以下の科料
列車運行に具体的な危険を生じさせる行為往来危険罪(刑法第125条)2年以上の有期懲役
線路内に置き石をする、設備を損壊するなどの行為往来危険罪(刑法第125条)2年以上の有期懲役
列車を停止させる、または遅延させる行為威力業務妨害罪(刑法第234条)3年以下の懲役または50万円以下の罰金
立ち入りにより事故を発生させた場合業務上過失致死傷罪(刑法第211条)5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
新幹線の線路に立ち入る行為新幹線特例法1年以下の懲役または5万円以下の罰金

過去の事例

実際に線路への立ち入りや危険な行為で罰せられた事例は多数存在する。

実際にあった事例1

2020年、東京都内で線路に立ち入り、スマートフォンで写真を撮影していた男性が、鉄道営業法違反で警察の取り調べを受けた。この男性の行為により、列車の運行に遅延は発生しなかったものの、鉄道会社の安全対策を妨げたとして罰金が科せられた。

実際にあった事例2

2015年、大阪府で線路内に置き石をした男性が、往来危険罪と威力業務妨害罪で逮捕された。この男性は、列車の運行を妨害する目的で何度も置き石を繰り返しており、その行為が悪質であると判断され、実刑判決を受けた。

実際にあった事例3

2018年、新幹線の線路内に立ち入った男性が、新幹線特例法違反で罰金刑を科された。この男性は、線路を横断しようとして立ち入ったが、その行為が新幹線の安全運行に危険を及ぼすとして厳しく処罰された。

これらの事例が示すように、線路への立ち入りは決して軽視できる行為ではない。

まとめ

線路への立ち入りは、法律で厳しく禁じられた危険な行為である。安易な気持ちで行った行為が、多くの人々の命を危険に晒し、自身も重い罪に問われる可能性がある。鉄道の安全な運行を守るためにも、線路には絶対に立ち入らない。

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