事故概要
2026年1月22日 午後6時半すぎ、東京都港区赤坂1丁目 特許庁前交差点で発生した公用車(トヨタ プリウス)がが赤信号を無視して交差点に突っ込み、死者1名(タクシー乗客)、6人が重軽傷を負った。公用車には、内閣府の日本成長戦略本部事務局の幹部職員が2名乗車していた。事故は、発車からわずか30秒で時速130kmに達し、赤信号の交差点へ突入するという異常なものだった。 ブレーキ痕はなく、ハンドルは45度切られた状態で衝突。自動ブレーキ(プリクラッシュセーフティ:PCS)が搭載されているトヨタ車で、なぜ暴走が止まらなかったのか。


この記事では、 ①自動ブレーキの作動条件 ②作動しない条件 ③過去の暴走事故との比較 ④意識喪失時の医学的パターン ⑤ハンドル45度=タイヤ角の推定値 ⑥総合的な事故分析 を体系的にまとめる。
1. トヨタの自動ブレーキ(PCS)は万能ではない
PCSは優秀だが、作動には明確な条件がある。
■ 作動するための基本条件
- 前方の車両・歩行者を正しく認識
- 衝突までの時間(TTC)が一定以下
- ドライバーが回避操作をしていない
- 車速が主に10〜80km/hの範囲
■ 作動しない条件(今回と重なる)
- アクセル全開
- 急加速中
- 急ハンドル操作中
- 100〜120km/h超の高速域
- 夜間・交差点で認識が不安定
今回の事故は、PCSが最も介入しにくい条件が揃っていた。
2. 事故当時の車両挙動は“異常条件のフルセット”
報道で判明しているポイント:
- 発車から30秒で130km/h
- アクセル全開
- ブレーキ痕なし
- ハンドル45度
- 夜間
- 赤信号を無視して交差点へ突入
これはPCSのアルゴリズムが最も苦手とする状況。
3. 過去の暴走事故との比較で見える“異常性”
■ 池袋暴走事故
誤操作により96 km/hまで加速。130km/hの急加速とは異なる。
■ 米国の急加速問題
類似点はあるが、本件の加速は異常に急。
■ 意識喪失事故(高速道路で多数例)
足がアクセルを踏み続け、ハンドルが片側に固定される。 → 本件と最も一致するパターン。
■ 電子制御異常
完全否定はできず、ECU解析が必要。
4. 意識喪失時の医学的パターンと車両挙動の一致
意識喪失は以下の原因で起きる:
- 心筋梗塞・不整脈
- 脳梗塞・脳出血
- てんかん発作
- 低血糖・ショック
これらが起きると、身体は次のように変化する。
■ 足がアクセルを踏み続ける
筋緊張が抜けても“足の重さ”で踏み込み続ける → てんかんでは硬直で強く踏むこともある
■ ブレーキ操作が完全に消える
ブレーキ痕ゼロと一致
■ ハンドルが片側に固定される
- 片側麻痺
- 硬直
- 脱力で戻せない → 45度固定と一致
■ 危険回避の反射が消える
赤信号を無視して突入
医学的にも、今回の挙動は「意識喪失+アクセル踏み込み」の典型パターン。
5. ハンドル45度 → タイヤ角はどれくらい?(推定値)
ここが今回の追加ポイント。
■ ハンドル角45度は“タイヤ角45度”ではない
車にはステア比があり、 一般的な乗用車では 14〜16:1。
つまり:
ハンドル45度 → タイヤ角 約2.8〜3.2度
となる。
■ 3度は小さく見えるが、130km/hでは致命的
高速域では、わずか1〜2度のタイヤ角でも車線を大きく外れる。
つまり:
- ハンドル45度
- タイヤ角3度前後
でも、130km/hでは右へ大きく流れ、制御不能になる。
■ なぜ45度も回ったのか?
意識喪失でも以下の理由で十分起こり得る。
- パワステで軽く触れるだけで回る
- 片側麻痺で片腕だけ力が残る
- てんかんの硬直
- 車体の揺れで勝手に切れる
- 意識喪失で戻せない
→ 45度は“意図的に回した角度”ではなく、“そうなってしまった角度”と考える方が自然。
6. 総合分析:最も整合的なシナリオ
医学・工学・過去事例を統合すると、 現時点で最も合理的な説明は以下。
【最有力】
運転手が発車直後に急性の意識喪失を起こし、 足がアクセルを踏み続け、 ハンドルが片側に固定され、 ブレーキ操作が行われなかった。
その結果:
- アクセル全開 → PCSは「強い加速意思」と誤認
- 130km/h → PCSの作動保証外
- ハンドル45度 → タイヤ角3度 → 高速で右へ流れる
- ブレーキゼロ → 車は最大加速
- 夜間・交差点 → 認識精度低下
→ 自動ブレーキは介入できず、暴走が止まらなかった。
7. この事故は“複合的な限界”が重なった結果
公用車事故は、
- 人間の生理的限界(意識喪失)
- 車両の電子制御の限界(PCSの作動条件)
- 速度の物理的限界(130km/hでは止まれない)
これらが同時に重なったことで発生したと考えられる。
単なる「運転ミス」でも 単なる「車の故障」でも 単なる「自動ブレーキの不作動」でもない。
“複合的な異常条件の重なり”が、この事故の本質であると考えられる。
