日本共産党はなぜ破壊活動防止法に基づく調査対象団体なのか?

共産主義・社会主義 政治

革命党であり続ける理由と目指す社会主義国家像

日本共産党は現在も破壊活動防止法の調査対象団体

法務省・公安調査庁の公式サイトで確認できる。
その理由は過去の暴力革命方針と「革命党」としての立場を今も放棄していない点にある。

日本共産党の反論

  • 「現在は合法的・平和的な活動しか行っていない」と主張し、「監視は憲法違反」と反発している。
  • 2020年代に入っても、国会で「破防法の監視対象になっているのは不当」と繰り返し主張しているが、公安調査庁の立場は変わっていない。

なぜ法的手段で国による調査をやめさせないのか

「行政事件訴訟法」上、「処分その他公権力の行使」に該当するかどうかが争点だが、「調査対象の指定」がどこまで「法律上権利義務に影響を与える行為」として訴訟要件を満たすか、非常に微妙で、法律上も難しい可能性がある。

理由内容
監視対象は調査であり処分ではない「調査対象指定」は調査のための措置であり、不利益処分ではない
行政訴訟で勝ちにくい裁判で処分性を認めさせるのは難しく、証拠なしでは敗訴のリスクも
思想との関係で争いにくい「敵の出方論」などにより公安の指定に合理性が認められやすい
言論戦の方が効果的裁判よりも国会や世論を通じて「不当性」を訴える方が戦略として有効

経緯と歴史

1950年代前半:武装闘争路線(いわゆる「51年綱領」)

  • 1950年:GHQの指示により共産党系組織が公職追放やレッドパージを受ける。
  • 1951年:「51年綱領」を採択し、当時の党は武装闘争を方針に掲げる。
    • 山村工作隊などを組織し、暴力的な行動(火炎瓶闘争など)も行われた。
    • 「敵の出方論」(=国家権力の対応次第では非平和的な手段もあり得る)という考え方が示された。

この時期に公安当局は「日本共産党は暴力革命を志向している」と判断し、監視対象とした。

1952年:破壊活動防止法の制定

  • 朝鮮戦争や国内の武装闘争の影響を受けて、政府は破壊活動防止法(破防法)を制定。
  • 同法に基づき公安調査庁が設置され、「暴力主義的破壊活動のおそれのある団体」を調査・監視できる権限を持つことになる。

これにより日本共産党は「監視対象団体」として正式に位置付けられることになった。

1955年以降:合法・平和路線への転換

  • 1955年:第6回全国協議会(六全協)で武装闘争路線を自己批判し、合法・平和的な議会主義路線へ転換。
  • ただし、「敵の出方論」自体はその後も綱領上で明確には放棄されず、公安調査庁はこれを「暴力革命の可能性を完全に否定していない」と解釈し続けている。

公安調査庁は監視継続

  • 日本共産党はその後、合法的な政党として選挙に参加し、政党交付金の対象にもなっているが、公安調査庁は継続して「暴力革命の方針を維持している」との立場を取っている。
  • 法務省・公安調査庁の公式サイトでは、現在も「破壊活動防止法に基づく調査対象団体」と明示されている。

日本共産党は「革命党」である

日本共産党は、現在でも綱領において「資本主義の枠を乗り越え、社会主義・共産主義の社会を目指す」ことを明記している。
革命手段としての暴力は放棄したと主張するが、「合法的手段による革命」を志向していることに変わりはない。

つまり、選挙によって社会主義政権を作り、制度そのものを根底から転換させるという方針を維持している。
この「合法的手段による社会革命」という姿勢が、公安調査庁の監視対象指定を解かれない一因となっている。

綱領が「革命党」であることを示している

日本共産党は綱領において、

  • 現在の資本主義は「労働者階級にとって不利益な制度」と規定
  • 生産手段の社会的所有(事実上の国有化)を最終目標とする
  • 社会主義・共産主義への移行を歴史的必然と位置付ける

と明記している。
したがって、「現行憲法の枠内で資本主義の改善を目指す政党」とは本質的に異なる。

日本共産党綱領
(略)
党は、この状況を打破して、まず平和で民主的な日本をつくりあげる民主主義革命を実現することを当面の任務とし、ついで社会主義革命に進むという方針のもとに活動した。
(略)
社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。
(略)
発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である。日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい。

https://www.jcp.or.jp/activity/kouryo/

なぜ綱領を変更しないのか

社会主義国家が世界的に失敗し、官僚独裁や粛清、貧困を生み出したことは歴史的事実である。
しかし共産党は「それは指導者の過ちであり、社会主義そのものは正しい」という立場を堅持している。
綱領を修正すれば党の正統性そのものを否定することになるため、戦略的に変更できない。

日本共産党が目指す「日本型社会主義」

日本共産党が目指す社会主義は以下だと考えられる。

  • 重要産業・金融機関の国有化
  • 生産手段の社会的所有
  • 医療・教育の完全無償化
  • 民間市場と国家計画の併存
  • 平和的手段による革命

現代はグローバル経済であり、資本・技術・企業は国境を越えて移動する。
大企業を国有化や重課税で縛れば、海外へ逃げ出し、国は弱体化する。
この現実を直視せず、閉鎖的国内経済モデルの前提で政策を語っている。

結論

日本共産党は過去の武装闘争こそ否定したものの、「革命党」としての立場は現在も捨てていない。
生産手段の社会的所有や重要産業の国有化といった社会主義政策を綱領で保持し続ける限り、公安調査庁による調査対象は解除されないだろう。

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