原爆投下から80年、アメリカ人の意識は揺れている(2025年6月調査)

広島原爆 政治

2025年6月に実施した全国調査結果

2025年8月、広島と長崎への原子爆弾投下からちょうど80年を迎える。第二次世界大戦の終結とともに世界の秩序を一変させたこの出来事について、アメリカ国民の考えは今なお大きく割れている。

ピュー・リサーチ・センターが2025年6月に実施した全国調査によると、アメリカ人の35%が原爆投下を「正当だった」と答え、31%が「正当でなかった」と回答。「わからない」とする声も33%にのぼった。この数字だけでも、社会の中でいかに評価が分かれているかが見て取れる。

特に、性別・年齢・政党支持などの属性によって意見は大きく異なる。

世論の推移

反対(不当)賛成(正当)
1945年(Gallup)85%
1990年(Gallup)41%53%
2015年(Pew)34%56%
2025年(Pew)31%(+34%不明)35%

原爆投下に対する意識(属性別)

グループNot Justified (%)
正当でなかった
Justified (%)
正当だった
Not Sure (%)
わからない
U.S. 成人全体313533
男性255122
女性362043
18~29歳442730
30~49歳342936
50~64歳274033
65歳以上204832
共和党支持層(含む傾向)205128
民主党支持層(含む傾向)422334
保守的な共和党支持者146125
穏健・リベラルな共和党支持者313534
保守的または中道的な民主党支持者372637
リベラルな民主党支持者501931

性別で見ると、男性の半数以上(51%)が正当と答えたのに対し、女性の43%は「わからない」としており、立場の違いが明らかになった。年齢層でも若年層(18〜29歳)は「正当でない」とする意見が最多。逆に高齢者層(65歳以上)は「正当だった」との意見が約半数を占める。

政党支持別では、共和党寄りの層が投下を正当とする傾向が強く、民主党寄りの層ではその逆。とくにリベラルな民主党支持者の50%が「正当でなかった」と考えている。

核兵器開発がもたらした「安全」と「不安」

原爆投下以降、核兵器の開発は世界を大きく変えたが、それをどう受け止めるかもまた、人々の立場によって分かれる。以下の調査結果が示すように、多くのアメリカ人は核兵器の存在が「世界をより危険にした」と感じている。

核兵器開発が世界と米国に与えた影響(属性別)

核兵器の開発が 世界 をどう変えたか?

グループLess Safe (%)
より危険
More Safe (%)
より安全
Not Sure (%)
わからない
U.S. 成人全体691021
共和党支持層641520
民主党支持層73620

核兵器の開発が アメリカ をどう変えたか?

グループLess Safe (%)
より危険
More Safe (%)
より安全
Not Sure (%)
わからない
U.S. adults 全体472626
共和党支持層373824
民主党支持層561727

世界全体について言えば、アメリカ人の7割が「より危険になった」と回答。安全になったと考える人はわずか1割。アメリカ国内に関してはやや意見が分かれており、「より安全」と「より危険」が拮抗する層も見られる。共和党支持者の間では「アメリカはより安全になった」とする声が38%で最多。一方、民主党支持層の過半数は「アメリカもより危険になった」と見ている。

歴史をどう受け止めるか

80年が経ってもなお、原爆投下という選択への評価は定まっていない。歴史的な正当性、倫理性、そして現在の安全保障政策にまで直結するテーマだけに、答えが簡単に一つにまとまることはないだろう。

しかし、こうしたデータが示しているのは、記憶と価値観が世代や立場によって変化し続けているという事実だ。核の時代に生きる現代人が、過去を見つめ直しながら、どんな未来を描こうとするのか。それが、今まさに問われている。

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