旅券値下げの裏で進む出国税3倍化の現実
2026年旅券手数料改定
2026年7月、旅券(パスポート)取得費用が大幅に引き下げられる。
10年旅券は15,900円から8,900円へと、これまでにない値下げ幅(7,000円の値下げ)となる。
電子申請の普及を促す狙いもあり、政府は「取得しやすい旅券制度」を前面に打ち出している。
◆ 旅券手数料の内訳(国費+都道府県)
旅券手数料は、以下の2つの合計で決まる。
- 国の収入(国費)
→ 外務省が徴収する部分 - 都道府県の収入(都道府県手数料)
→ 旅券事務所を運営する都道府県が徴収する部分
◆ 新旧の内訳(例:10年旅券・成人)
現行の都道府県手数料 1,900円では旅券事務所の運営コストを賄えず、多くの都道府県で一般財源から補填している状況があり、都道府県手数料は3,900円に値上げとなっている。
しかし、国費が大幅に下がったので、全体としては下がったように見える。
● 旧料金(〜2026/6/30)
10年旅券(成人)
- 国費:14,000円
- 都道府県:1,900円
- 合計:15,900円(電子申請)
※窓口申請は都道府県分が+400円で16,300円
● 新料金(2026/7/1〜)
10年旅券(成人)
- 国費:5,000円
- 都道府県:3,900円
- 合計:8,900円(電子申請)
※窓口申請は都道府県分が+400円で9,300円
◆ 5年旅券(5年)の内訳
● 旧料金(12歳以上)
- 国費:9,000円
- 都道府県:1,900円
- 合計:10,900円(電子)
● 旧料金(12歳未満)
- 国費:4,000円
- 都道府県:1,900円
- 合計:5,900円(電子)
● 新料金(18歳未満共通)
- 国費:1,000円
- 都道府県:3,400円
- 合計:4,400円(電子)

2026年制度改正の二面性
このニュースは広く拡散し、多くの人が「海外旅行がしやすくなる」と受け止めている。しかし、同じタイミングで実施されるもう一つの制度改正については、驚くほど話題になっていない。それが、出国税の3倍化である。
出国税3倍化の衝撃
出国税は、航空券や船舶のチケット購入時に自動的に加算され、2026年7月1日より前は1,000円であるが、2026年7月1日以降の出国分から3,000円へと引き上げられる。国籍を問わず、日本から出国するすべての人が対象となる。
国際観光旅客税法(平成三十年法律第十六号)
第十五条 国際観光旅客税の税率は、本邦からの出国一回につき、千円とする。
出国税は“出国のたびに”必ず発生する。 つまり、旅券のように10年に一度の支払いではなく、海外旅行の回数が多いほど負担が増える構造である。
10年に4回海外旅行をする人であれば、出国税で3,000円 × 4回=12,000円(2026年7月1日より前は1,000円 × 4回=4,000円)となり、旅券値下げの恩恵を上回る(8,000円の値上げ)。旅券が安くなったという印象とは裏腹に、実際の負担は増える可能性が高い。
なぜこのタイミングで増税なのか
政府は出国税の増額について、観光インフラ整備やオーバーツーリズム対策の財源確保を理由としている。訪日観光客の増加に伴い、空港や観光地の混雑対策、地方への誘客、文化財保護などに必要な費用が増大しているためである。
一方で、出国税の増税は海外旅行者の心理的負担を高める可能性がある。そのため、旅券手数料の値下げは、増税による旅行需要の冷え込みを抑える“バランス調整”として導入された側面も否定できない。
表向きは「旅券が安くなる」という朗報であるが、実態としては「出国税が3倍になる」という負担増が同時に進む。両者は切り離せないセットである。
旅券値下げと出国税増税のセット構造
旅券値下げは確かに利用者にとってメリットがある。しかし、出国税の増税はそのメリットを相殺するどころか、海外旅行者にとっては総合的な負担増となるケースが多い。
- 旅券:10年に1回の支払い
- 出国税:出国のたびに必ず発生
- 海外旅行の回数が多い人ほど負担増(10年に4回以上海外旅行をする人)
- 旅券値下げは“見える値下げ”、出国税は“見えにくい増税”
旅券値下げのニュースだけが独り歩きし、出国税増税の影響が十分に理解されていないのが現状である。
2026年までに知っておくべき実務的ポイント
制度改正は2026年7月1日から適用される。 そのため、以下の点を押さえておく必要がある。
- 2026年6月までに旅券を更新すれば旧料金が適用される
- 2026年7月以降に出国する場合は出国税3,000円
- 航空券の購入時期によっては旧税率が適用されるケースもあるため、購入条件の確認が必要
海外旅行を予定している人にとって、2026年の前後で費用が大きく変わる可能性がある。

