今回の法令改正の意義
令和7年(2025年)11月1日より、警察官は街頭活動など活動服勤務においてネクタイを着用しないことができるようになった。これは警察庁訓令「警察官等の服制に関する細則」の改正によるものであり、従来の「制服勤務=ネクタイ必須」という原則が大きく転換されたのである。
制服とネクタイの象徴性
警察官の制服は権威と信頼を示す象徴であり、長らくネクタイ着用が必須であった。特に冬服期間は厳格に運用され、街頭活動でも「制服=ネクタイ」が原則であった。しかし、夏の猛暑に対応するため、徐々に軽装勤務が導入されていった。
第一段階:夏のノーネクタイの歴史
- 1960年代~70年代:夏服として半袖シャツが導入され、ネクタイを省略する軽装勤務が定着した。
- 2005年以降:環境省が「クールビズ」を推進し、官庁や企業で夏期のノーネクタイ・ノージャケットが広がり、警察も社会的潮流に合わせて夏期のノーネクタイを実施。
- 2010年代:全国的に「夏服=ノーネクタイ」が完全に標準化し、交番勤務や交通取締りでは開襟シャツ姿が一般的となった。
この時点で「夏はノーネクタイ」が当然の風景となっていたのである。
第二段階:2025年春の制度改正
- 4月1日:警察法施行令改正により、活動服勤務時のノーネクタイが可能となり、千葉県警が即日運用を開始した。
- 4月15日:愛知県警が交番勤務警官に年間ノーネクタイを導入し、帽子の脱帽も自由化した。
- 4月18日:広島県警も活動服勤務でノーネクタイを正式導入した。
- 警視庁も新制服導入に合わせて活動服勤務時のノーネクタイを認め、女性警察官のスカート廃止を同時に実施した。
ここで「夏だけでなく、春から秋もノーネクタイ」という流れが広がり始めたのである。
第三段階:全国統一へ
令和7年(2025年)11月1日、埼玉県警は「街頭活動を行う警察官については、ネクタイを着用しないこととしました」と公式に発表した。これまで冬服着用期間(11月~4月)にはネクタイ着用が義務づけられていたが、活動服勤務に限りノーネクタイを認める運用へと改められたのである。
同時期に岡山県警も「活動服を着用した警察官は11月からノーネクタイとなりました。警察庁が制服に関する規定を改正したのに合わせたもの」と発表し、島根県警も交番勤務や交通取締りなど活動服着用時にノーネクタイを認めると公表した。
これら複数県警の公式発表は、警察庁訓令改正を受けた全国的な制度化の証拠である。つまり、夏期に限定されていたノーネクタイ勤務が、2025年11月からは冬服期間にも拡張され、全国的に通年で認められるようになったのである。
📊 各組織の公式発表一覧
| 組織名 | 施行日 | 発表内容 |
|---|---|---|
| 警視庁 | 2025年4月~ | 制服改正に伴い活動服勤務時のノーネクタイを認める。女性警察官のスカートも廃止 |
| 埼玉県警 | 2025年11月1日 | 「街頭活動を行う警察官については、ネクタイを着用しないこととしました」 |
| 岡山県警 | 2025年11月1日 | 「活動服を着用した警察官は11月からノーネクタイとなりました。警察庁が制服規定改正に合わせたもの」 |
| 島根県警 | 2025年11月1日 | 「交番勤務や交通取締りなど活動服着用時にノーネクタイを認める」と公表 |
法令改正の条文比較
改正前(平成27年12月14日 警察庁訓令第20号)
以下記載なし
改正後(令和7年3月31日 警察庁訓令第3号)
「警察官は、前条第1項各号のいずれかに該当する場合において、活動服を着用して勤務
するときは、警察本部長の定めるところにより、ネクタイ又は活動ネクタイを着用しない
ことができる。」
この一文の追加が、象徴性から機能性への大きな転換を示しているのである。
背景と意味
- 猛暑対策:酷暑による熱中症リスクを減らす。
- 安全性:格闘や救助時にネクタイを掴まれる危険を防ぐ。
- 社会的潮流:民間企業のクールビズ導入から約20年遅れで、警察も象徴性より機能性を重視する時代へ。
夏から始まった流れが冬にも拡張
警察官の制服は、かつては権威の象徴であった。しかし、夏の軽装勤務から始まったノーネクタイの流れが、2025年に冬にも拡張され、ついに通年制度化されたのである。これは制服の象徴性から機能性への転換を示す象徴的な出来事である。

