国会議員資産公開制度は形骸化している

国会議事堂 政治問題

2025年12月5日(金)午後、政府が高市内閣(10月21日発足)の閣僚19人分の資産を公開した。対象は、高市早苗首相と閣僚18人、副大臣・政務官。家族分を含め資産総額の平均は 6641万円。本人分のみでは平均 3245万円。最多は小泉進次郎防衛相の 2億7248万円(全額が妻・滝川クリステル名義)。最少は松本尚デジタル相の 550万円。高市早苗首相は 3206万円(奈良市の土地建物1142万円+夫・山本拓元衆院議員の資産を合算)であった。

2025年 高市内閣 閣僚資産一覧(単位:万円)

「資産=0円」(平口洋法相、小泉進次郎防衛相、黄川田仁志こども政策相)という数字は、政治家が本当に資産を持っていないのではなく、制度が資産の大部分を公開対象から外しているために生じる見かけの数字
この点を理解しないと、公開制度の数字は誤解を招く。

氏名本人分小計家族分含む総資産
高市早苗首相11423206
林芳正総務相1146415088
平口洋法相05389
茂木敏充外相1880219397
片山さつき財務相359113966
松本洋平文科相704704
上野賢一郎厚労相19432422
鈴木憲和農水相44154415
赤沢亮正経産相20652065
金子恭之国交相816836
石原宏高環境相22772277
小泉進次郎防衛相027248
木原稔官房長官14581458
松本尚デジタル相550550
牧野京夫復興相49597316
赤間二郎公安委員長114811991
黄川田仁志こども政策相01100
城内実経済財政相53095740
小野田紀美経済安保相10171017

平均:6641
トップ:小泉進次郎 27248
最少:松本尚 550

資産公開の対象と範囲

日本で資産公開を義務付けられているのは2種類。

  1. 国会議員(衆議院・参議院)
    • 根拠法:「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」(1992年制定、1993年施行)
    • 当選後100日以内に資産報告書を提出し、その後毎年更新。
    • 公開対象は本人分のみ。配偶者や扶養家族は対象外。
  2. 閣僚(首相・国務大臣、副大臣・政務官)
    • 内閣発足時に資産を公開。
    • 本人だけでなく、配偶者・扶養子の資産も含める。
    • 国会議員よりも広い範囲を対象にしている。

公開対象資産

  • 土地・建物(固定資産税課税標準額)
  • 預貯金(定期預金のみ。普通預金・当座預金は除外)
  • 有価証券(額面金額。株券は銘柄・株数・額面を記載)
  • 自動車・船舶・航空機・美術工芸品(取得価額100万円超)
  • ゴルフ場利用権
  • 貸付金・借入金

除外されるもの

  • 普通預金・当座預金
  • FX(外国為替証拠金取引)
  • 暗号資産(仮想通貨)
  • その他の流動資産や新しい資産形態

株式・FX・暗号資産の扱い

株式は電子化されているため証券口座で保有する分は公開対象になるが、額面金額での計上なので時価とは乖離する。FXや暗号資産は完全に対象外。政治家が巨額の流動資産を持っていても公開されない。

海外事例との比較

  • アメリカ: 普通預金や証券、不動産、借入金まで公開。収入源・負債も対象に含め、利害関係の把握を重視。レンジ表示でプライバシーと透明性を両立。
  • ヨーロッパ: UNCAC(腐敗の防止に関する国際連合条約)に沿って広範囲の資産・利害関係の公開を制度化。普通預金や金融資産を広く対象にする国が多く、家族分の詳細公開やオンライン閲覧を義務化する国もある。
  • 韓国: 公職者倫理法で普通預金・証券・不動産・借入金に加え、暗号資産まで対象。家族分の開示も厳格。新しい資産形態の更新が早い。

日本は比較可能性を理由に対象を狭めているが、透明性の本質を欠いている。

制度が形骸化する理由

  • 普通預金は変動が激しいため比較が難しいという理屈で除外。だが海外はレンジ開示で調整している。
  • プライバシー配慮を理由に金融口座残高を外すが、透明性の目的を犠牲にしている。
  • 行政負担を避けるため、時価評価や暗号資産の検証を制度に組み込まない。
  • 名義ベースの記載により、本人分ゼロでも家族分巨額という「見かけの縮小」が制度的に正当化される。
  • 株式を時価評価額ではなく額面で見る発想は、時価が資産価値の本質である市場社会と相容れない。電子化・暗号資産・デリバティブの普及に制度が未追随。

歪みの帰結

  • 誤解の制度化:資産が少なく見える数字が制度によって量産される。
  • 利害関係の不透明化:持株や借金が不明だと政策に影響し得る利害関係の検証ができない。
  • 比較の幻想:安定指標で比較可能と言いつつ、見ているのは資産の断片。
  • 更新遅延の常態化:新しい資産形態へ制度が追随しない。暗号資産やトークン化証券が拡大するほど穴は広がる。

制度改修の方向性

  • 普通預金のレンジ開示(四半期平均残高など)
  • 負債の必須開示(住宅ローン、証券担保、事業借入)
  • 株式・投信の時価評価採用
  • FX・デリバティブの透明化(純エクスポージャと証拠金残高のレンジ開示)
  • 暗号資産の開示(主要チェーン別、取引所・自己保管の別)
  • 名義合算の実質開示(本人・配偶者・扶養子の合算額を併記)
  • 第三者監査と虚偽申告への制裁強化

結論

日本の資産公開制度は、国会議員と閣僚双方に義務付けられているが、対象範囲が狭く、流動資産や新しい資産形態を除外することで透明性を欠いている。海外の事例と比較すれば、制度は形骸化しており、国民に誤解を与える構造になっている。政治とカネの不信を防ぐためには、普通預金や負債、暗号資産まで含めた包括的な公開制度への改革が不可欠だ。

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