総選挙1回分コスト
衆議院総選挙は、1回の実施だけで衆議院の年間維持費を上回る。
2024年(令和6年)総選挙の費用は 約803億円。
一方、衆議院の年間維持費は 約664億円。
つまり、総選挙は「国会を丸ごと1年動かすより高い」国家イベントである。
2026年に総選挙が実施されれば「過去最大規模の支出」になる可能性があり、850億円を超える可能性がある。
自治体の人件費と郵便料金は構造的に下がらないため、総選挙費用は今後も右肩上がりになる。
総選挙は民主主義の根幹を支える制度である一方、1回で国会1年分以上のコストを飲み込む巨大イベントであることを忘れてはならない。
この規模感を理解するために、まず衆議院の維持費と議員1人あたりの公費負担を整理し、そのうえで総選挙費用の内訳と節約可能性を検討する。
衆議院の年間維持費は約664億円
令和6年度(2024年度)の衆議院歳出概算要求は 66,379,545千円(約664億円)。
この中には、議員の歳費(給料)、公設秘書給与、議員旅費など「議員に直接かかる費用」も含まれる。
内訳は次の通り。
- 国会の権能行使に必要な経費:44,362,079千円
→ 議員歳費、公設秘書給与、旅費など - 衆議院の運営に必要な経費:22,017,466千円
→ 職員人件費、委員会運営など - 衆議院施設費:2,183,308千円
→ 議員会館・庁舎の維持管理
議員の給料はもちろん含まれている。
議員1人あたりの年間公費負担は約6,000〜7,500万円
議員にかかる費用を積み上げると、次のようになる。
- 歳費(給料):約1,553万円
- 期末手当:約635万円
- 諸手当(調査研究広報滞在費・立法事務費など):約1,980万円
- 公設秘書給与:1,500〜2,400万円
- 旅費・宿舎などの公費負担:500〜1,000万円相当
合計すると、
議員1人あたり年間6,000〜7,500万円。
衆議院議員は465人なので、議員関連費用だけで 約2,790〜3,487億円規模 になる。
総選挙費用は803億円。内訳の9割は自治体への委託費
2024年総選挙の費用は 803億円。
その内訳は次のように分解できる。
- 選挙執行委託費(自治体への委託):730億円
- 新聞広告費:3.1億円
- 選挙公報印刷費:0.4億円
- 在外選挙郵送料:0.15億円
- 候補者用無料はがき:33.7億円
- 候補者用無料乗車券:1.3億円
- 選挙立会人等の謝金:0.01億円
- その他庁費:0.8億円
圧倒的に大きいのは 自治体への委託費(91%)。
投票所の設営、人件費、開票作業、掲示板の設置・撤去、警備などがここに含まれる。
なぜ総選挙はこんなに高いのか
理由は単純で、次の3つが支配的である。
- 全国1万7千か所以上の投票所・開票所の設営
- 数十万人規模の人件費
- 郵便料金・印刷費の高騰
特に投票所の設営と人件費が巨大で、ここを変えない限り総選挙費用は下がらない。
節約の余地はどこにあるのか
現行制度のままでも、いくつかの節約ポイントは存在する。
1. ポスター掲示板の縮小・デジタル化
掲示板の設置・撤去は自治体にとって重い負担。
電子ペーパー掲示板の導入で大幅削減が可能。
2. 選挙公報の電子化
紙の印刷・配布は高コスト。
電子版を標準化し、紙は希望者のみ配布する方式を検討。
3. 投票所の統廃合
人口減少地域では投票所が過剰なケースもある。
ただし「投票しやすさ」とのバランスが必要。
4. 期日前投票の効率化
AIによる混雑予測で人員配置を最適化。
5. 在外選挙のオンライン化
郵送コストが高騰しているため、電子投票が実現すれば大幅削減。
ただし、投票の秘密を守ることや改ざん防止等、セキュリティ要件が非常に厳しい。
総選挙は民主主義のインフラであり、巨大な固定費である
総選挙は「国会1年分のコスト」を飲み込む巨大イベントだが、
これは民主主義の根幹を支えるためのインフラ投資でもある。
ただし、制度設計が昭和のまま止まっている部分も多く、
デジタル化・効率化の余地は確実に存在する。
